2008年6月13日(金)22:06

アイルランドはリスボン条約批准を否決し、EU改革を阻止

ダブリン/ブリュッセル(ドイツ通信社dpa)

アイルランドは国民投票でリスボン条約を否決し、欧州連合の抜本的改革を当面阻止した。金曜日に行われた開票結果によれば、反対は53,4パーセントにのぼり、明確な否決となった。賛成は46,6パーセントであった。

アイルランドはEU加盟27ヶ国中、国民投票で批准を問う唯一の国であった。全体では862,415人が反対票を、752,451人が賛成票を投じた。深刻な政治危機を前に、EU加盟諸国の政府からは反発の反応や忍耐の呼びかけなどが出された。来週の木曜と金曜(6月19日、20日)にブリュッセルで開かれるEU27ヶ国の首脳会議は危機対策サミットになる。

リスボン条約の交渉をリードしたドイツのアンゲラ・メルケル首相は、フランスのニコラ・サルコジ大統領と同様、残りの8ヶ国でも批准手続きを進める必要があると求めた。欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長ならびにEU議長国を務めるスロヴェニアのヤネス・ヤンシャ首相も同じ意見である。

すでに2005年フランスとオランダがリスボン条約の前身のEU憲法を国民投票で否決しており、これにより長年の懸案であった機構改革が阻まれた経緯がある。

サルコジ大統領にとってはアイルランドの否決は特別な課題となる。というのも7月にEU議長職を引き継ぎ、打撃を受けたEUの内部を固め、対外的にEUを代表する責任があるからである。サルコジ大統領は次のEU首脳会議から現議長国のスロヴェニアを助け、深刻な危機に対する共同の回答を見出さねばならない。メルケル首相は来週木曜日、EU首脳会議を前に政府声明を発表する予定である、とウルリヒ・ヴィルヘルム首相広報官は語った。

およそ5億人の人口を抱える欧州連合の政治的未来を決定したのは、結局300万足らずのアイルランドの有権者であった。木曜日の国民投票の投票率はおよそ45パーセントにとどまった。

アイルランドのブライアン・カウエン首相は条約の批准失敗と敗北を有権者の前で認めた。アイルランド国民の投票結果はEUにとって「数年間の仕事の停滞」を意味する。しかしこれまで欧州連合は危機を脱する道を常に見出してきた、とカウエン首相は語った。アイルランドの大政党は国民に対し、賛成票を投じるよう一致して呼びかけてきた。EU改革反対派はとりわけ農村部に多かったが、都市の労働者居住地区でも強さを見せた。一方、ダブリンの中産階層の選挙区では批准賛成派が上回った模様である。

かつては欧州の最貧国の一つに数えられたアイルランドは、EU加盟でもっとも大きな恩恵を受けた国の一つでもある。現在でも数百億ユーロの補助金がEUから支給されている。アイルランドは2001年にニース条約の批准を否決した経緯がある。その際は二度目の国民投票で批准に成功し、以後同条約が現在のEUの法的基盤を成している。

リスボン改革条約は、とりわけ議長国ドイツおよびポルトガルのもと、困難な交渉の末、昨年12月にようやく調印の運びとなった。発効は2009年1月1日に予定されていた。

同条約にはいくつかの改革が盛り込まれている。閣僚理事会の票決手続きにおける多数決決定の拡大、加盟国議会の権限強化、独自の外交権限を持つEU「外相」ポストの創設、ならびに欧州理事会における常任議長(大統領)ポストの創設である。ニース条約が今後も適用される限り、EUはさらなる拡大ができない。なぜなら同条約では最大27ヶ国しか認められていないからである。したがってクロアチアの2009年加盟という目標は危うくなる。

バローゾ委員長はリスボン条約の批准手続きを継続するよう呼びかけた。加盟全27ヶ国は、アイルランドを含め、危機を抜け出す道を見出す責任を共同で負わねばならない、と委員長は語った。議長国スロヴェニアのヤンシャ首相は、投票結果は残念であるが、アイルランド国民の民主的な意思を尊重しなくてはならない。私はこれからアイルランドの首相らと状況についての協議を行う、と述べた。

ドイツのキリスト教民主同盟(CDU)と社会民主党(SPD)の指導的EU政治家は、EUが新たに深刻な危機を迎えると警告した。SPDのクルト・ベック党首は、国民投票の結果は人々が社会的EUを望んでいることの表れだとの見解を述べた。緑の党は、この結果は「相も変らぬ政府間の密室政治に対する真っ向からの反対である」と分析した。キリスト教社会同盟(CSU)のエルヴィン・フーバー党首は、EUが「改革路線を継続する」必要があるとの見解を示した。

欧州議会のマルティーン・シュルツ社会民主党系議員団長(SPD)は、次の首脳会議で各国首脳がEUを明確に支持する旨を表明するよう求めた。「私たちはEUにおける明確な方向決定を必要とする」とシュルツ議員団長はドイツ通信社に語った。

イギリス、スペイン、オランダは、アイルランドの否決にかかわらず、リスボン条約の批准を進める意向である。アイルランドの国民投票の結果は「尊重され、また克服され」ねばならない、とイギリスのデーヴィッド・ミリバンド外相は述べた。スウェーデン政府も同様に批准を行う意向を示した。ポーランドのドナルド・トゥスク首相も、条約の発効は可能と主張した。

ルクセンブルクのジャンクロード・ユンケル首相は、欧州連合が危機に陥ったとの見解を示した。首相はこの日の晩、ドイツ第二テレビ(ZDF)の番組「ホイテ・ジュルナール」heute-journalで、アイルランド国民は「ゼロ決定」を行ったのだと述べた。フィンランドのアレクサンデル・ストゥブ外相は、今後は「創造的な解決策」を考える必要があると語った。デンマークのアンデルス・フォー・ラスムッセン首相は控えめな反応を示し、票決結果を尊重するとだけ述べた。

一方、チェコのヴァーツラフ・クラウス大統領はリスボン条約が廃案になったとの見方を示した。「リスボン条約のプロジェクトは今日アイルランド有権者の決定により終止符が打たれた。批准の継続はありえない」と大統領は語った。EU統合懐疑派として知られるクラウス大統領は、アイルランドの国民投票の結果について、「人工的でエリート的なプロジェクトとEU官僚主義に対する自由と理性の勝利」であると評した。

原題:Iren stoppen EU-Reform mit Nein zu Lissabon-Vertrag




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